カテゴリー「読みモノ」の59件の記事

読書の秋

ここ2ヶ月で読んだ本を羅列する。順不同。オレの趣味嗜好出まくりのラインナップになった。

桜井進/感動する!数学 PHP文庫
小島寛之/使える!確率的思考 ちくま新書
大森惠子/高校生が読んでいる『武士道』 角川oneテーマ21
石破茂/国防 新潮文庫
辛酸なめ子/女子高育ち ちくまプリマー新書
野崎昭弘/数学で未来を予測する ギャンブルから経済まで PHPサイエンス・ワールド新書
吉本佳生/無料ビジネスの時代―消費不況に立ち向かう価格戦略 ちくま新書
上杉隆・烏賀陽弘道/報道災害【原発編】事実を伝えないメディアの大罪 幻冬舎新書
冨山和彦/「決断できないリーダー」が会社を潰す PHP文庫
大前研一/「知の衰退」からいかに脱出するか? 光文社知恵の森文庫
橋爪大三郎/はじめての構造主義 講談社現代新書
浜矩子/「通貨」を知れば世界が読める 1ドル50円時代は何をもたらすのか? PHPビジネス新書
古賀茂明/官僚の責任 PHP新書
フィッシャー&ユーリー 金山宣夫・浅井和子 訳/ハーバード流交渉術 知的生きかた文庫
真壁昭夫/最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス 朝日新聞出版
齋藤孝/現代語訳 論語 ちくま新書
ケビン・メア/決断できない日本 文春新書


この場に、適当に書評を書いていきたいと思っております。


BGM
LINDBERG/ROUGH DIAMOND
THE OFFSPRING/Mota
Perfume/One Room Disco
RAINBOW/Kill The King
Rie fu/decay

啓文堂の見識を疑う

知的生活追跡班/この一冊で「考える力」と「話す力」が面白いほど身につく!★★☆☆☆

啓文堂書店の推奨本になっていたので、中身を確認せずにレジに持って行った。ポップの文章には、この本がいかに役に立つものかという内容が仰々しく書かれていたが、事実は違うと言わざるを得ない。面白いほど身につく訳じゃないし、書かれている内容も在り来たりでインパクトが無い。

第1部が「考える力」。こっちの方がまだマシか。革命的な方法は掲載されていない。最初から最後まで説明が軽すぎて、説得力が感じられない。「そうすれば良いのか」とか全くと言って良い程無かったです。


第2部は「話す力」。結局さ、人と人とのコミュニケーションに正解とか無いと思うんだよね。それこそ、相手・状況・場所、その他全てを勘案して、総合的に判断し行動しなければならない。この本に書かれている様な付け焼刃の心理学的なロジックを適用すれば円滑になっちまう程単純じゃない。

こちらが全く同じ態度で同じ言葉をかけたとしても、受け手である相手の気分次第で、その言葉の持つ意味は如何様にも変化するしね。

これを言ってしまったら身も蓋も無いが、コミュニケーションはセンスによるところが非常に大きいんじゃないかと。相手の懐に入るのが異様に上手い人っているじゃないですか。速攻で人と打ち解けて、誰とでも親しくなれてしまう人。そういう人は、人と接する時、事前にこうやって会話しようとか絶対に意識して無い。そんな事考えていたら、スムーズな会話が成立する筈がないから。

そして、穿った見方かも知れないが、『薄くて軽い話』(具体的には書けない感覚的なモノ)を主戦場としている人は、このタイプに属する傾向が強い気がする。

こんな事を書いていたらある一人の人物(以後、Aとする)が脳裏に浮かんで来てしまった。オレは本能的にA及びAの影と戦おうとしている。だが、とりわけ社会人になって以降、オレがAに近い姿を晒す機会が多くなっているのは確かだ。それは便宜上そうしているのだが、時々オレ自身もAに近づきつつある様な気がして不安になる。

皆から面白いと評価される事は、すなわち面白く無いという事の証明。これを忘れてしまったら、オレはAと同化したも同然であろう。


以前、kcさんが会社に「次の飲みをいつにする?」という内容の電話をかけてきた事があったが、彼は電話口の向こうにいる人物が紛れも無くオレだったのに、それと気付かなかった。普段と余りにも口調と態度が異なっていたからだと言われた。そして、ある種の恐怖を感じたと。これは、なかなか考えさせる出来事だった。

オレが会社で日々、極々自然に行っている行為がオレをよく知る人にとっては恐怖の対象となる。自分では、会社においても自然体を貫いていると思っていたが、実は十分に不自然体だっという事でしょうね。骨の髄までリーマンだ。オレの精神はそこそこA化しているのかも知れない。残念である。

本筋を見失った。えーと、つまり、この本は面白くなかったって事だ。


BGM
MOTLEY CRUE/Same Ol' Situation (S.O.S.)
Orianthi/Highly Strung
VAN HALEN/Top of the World
SR71/Right Now
U2/vertigo

民主党政治のリアルを見た

高橋洋一・竹内薫/鳩山由紀夫の政治を化学する―帰ってきたバカヤロー経済学―★★★★☆

高橋洋一と言えば、竹中平蔵のブレーンとして知られる経済学者。小泉政権下、構造改革に携わった。昨年3月、練馬区の温泉施設のロッカーから高級時計と財布を盗んで逮捕された人と言えば分かる人もいるかも知れない。この逮捕劇はかなりの「いわく付き」だが、ここでは詳しく触れる気はない。

この本は一見ふざけた表紙をしているが、内容は実に真面目そのもの。高橋洋一が先生、竹内薫が生徒というシチュエーションを利用し、民主党政治の合理的行動を分かり易く説明している。余談だが、竹内薫は「99.9%は仮設」(光文社新書)で有名。

序盤で明らかにされてしまうが、民主党は決して「国民のための政治」を行っている訳ではないらしい。兎にも角にも「支持母体のための政治」を行っている。ただ、これを露骨にやると、浮動層がそっぽを向いてしまうので、巧妙に水面下でやっているという訳だ。

支持母体優先、この視点で見ると、党内の人事および組閣人事の合理性が浮かび上がって来る。正に目から鱗でしたね。笑福亭仁鶴ばりに「なるほど、なるほど」となった。絶妙な人材配置である。恐ろしく腹黒いぜ、民主党のブレーンは。

中盤は、マニフェスト分析。どこを取っても、支持母体の利する事を行うという基本方針が貫かれている。ホントに知らなかったぜよ、桂さん。

国民に対しては、自民党がやって来なかった事を大々的にやれば、基本的にはOKというスタンス。国民は「やってる感」にすぐ騙されるという考えらしい。まあ、これはよく分かる話。最近は余りにも口だけなんで支持率が大幅に下落しているけど。

こんな感じで、支持母体のために合理的戦略が着々と進められる一方で、民主党には小沢陰関数という超強力な関数がつきまとう。民主党政治はこの陰関数によって規定されると言っても過言ではないと書かれている。そうでしょうねえ。

民主党政治を、鋭い視点で科学的に分析しながらも、皮肉たっぷりに、結局は小沢さんが全てを決める、何をするのも彼の意向次第という結論を持ってくる辺り、非常に良いなと思いました。

現在の日本の問題点、政治の基礎も知る事が出来る一冊。

なかなかのエンタテインメント

久々に書評を。

最近、何故だか読書欲が爆発していて、暇な時間があればず本を読んでいる。

先日、あぶく銭とは全く違う、しっかりと狙って得る事となった少なくない臨時収入が入ったので、何か買っちまおうかとなったのだが、結局買ったのは億万長者への切符「BIG」をいつもの倍額と、新書4冊だけであった。丸善の新書コーナーに行くと、軽く10冊くらいは読みたいなあと思う本が積んである。嗚呼、時間が欲しい。

今回は最近買った新書ではなく、半年くらい前に読んだ小説について書こうと思う。


乾くるみ/リピート★★★★☆
主人公の毛利は大学4年生。9月1日、就職活動も終わり、自宅で卒論のレジュメ作成を行っている時、部屋の電話が鳴った。電話は、見知らぬ男が1時間後、地震が起こるとだけ伝える内容だった。

1時間後、本当に地震が起こった。直後、同じ男から入電。男は風間と名乗り、自分が未来から来たと言った。困惑する毛利に、畳みかける様に、現在の記憶を持ったままの状態で、過去に遡る時間旅行―風間はリピートと呼ぶ―をする仲間として彼が選ばれたと告げたのであった。

9月19日の夜、久しぶりに風間から電話がかかってきた。時間旅行のツアーに誘った人を一同に集めて詳細を説明をしたいという申し出であった。

9月29日、約束の場所へ行くと、毛利の他に8人の人間がいた。風間は、1ヶ月後、ある場所に現れる時空の裂け目に入ると、1月13日、午後11時13分7秒に戻れる事、現在自分が8度のリピートを繰り返し、9度目の人生を過ごしている事などを説明した。合わせて、風間のオリジナルの人生をR0、2度目の人生をR1、現在をR9と定義する事も伝えられた。

10月30日、風間と共に時空の裂け目に入った10人の男女は、全員R10へ行く事ができたのであった。

しかし、リピートを体験した人間が1人、また1人と不審な死を繰り返していく。果たして真相は?長くなってしまったが、そんな話。

前半は時間旅行をするまでの話。突拍子もない時間旅行の話を聞かされた後、日常生活を送りながら様々な事を考える毛利と共に、読者は『現在の記憶を持ったまま過去に遡れたら』という1度は考えた事がある夢物語を夢想する事になる。オレも何をしようかと考えた。とりあえず競馬と株はやるでしょう。

風間は、有る程度の利殖を行うのは構わないが、基本的にはリピート後もそれまでと同じ様に過ごすのがベターだと釘を刺す。

リピーターの唯一にして強力な特権は未来の記憶を持っている事であり、生活そのものを劇的に変更させると、その記憶をほとんど活かす事ができなくなってしまうからとの事。もし仮にオリジナルの人生で失敗した合コンで上手く立ち回り、狙っていた女性を落としても、その先の人生は全くの闇という訳である。極端な話、デートに行った先で交通事故に巻き込まれて死んでしまうなんていう結末も無きにしも非ずだ。

思わず納得させられた。記憶を持って過去に戻っても、金儲け以外に、やれる事はそれほど多く無いのであった。現実に時間流行など出来はしないと分かってはいるが、何だかちょっぴり残念。

SF全開だった物語は、R10突入後、徐々にミステリー色が強くなる。リピーター達の連続死により、メンバー間に緊迫感と疑心暗鬼が生まれる。リピートの秘密は、メンバーのみが知る事実であり、死の連鎖の裏に潜む共通項を知る一般の人間はいない。リピーター達は一種の閉鎖状況に追い込まれる。ある者は利己的な行動に走り、ある者は圧倒的な保身を狙う。人間の卑しさ、浅ましさの描写はオレの大好物。追い込まれる事によって、人々が本性を現す、このパターンは実に良いですよ。

犯人はやはリピーターの中にいるのか?自然と興味はここに向かってしまうのだが、ミステリーファンも納得の驚くべき結末が待っている。そして、衝撃のラストシーン。オレは頷きながら、こう思った。

そうだよな。そうじゃなきゃダメだ。

単なるタイムトラベルモノの枠に収まらない良作。MVPは天童太郎。調べてみると、この人物、著者の他の作品にも多数登場するようで。だったら他も読むしかなさそうだ。

さすがの一言

池上彰/知らないと恥をかく世界の大問題(角川SSC新書)★★★★☆

タイトルは仰々しい。知らなくても恥をかく事はなく、大問題と言うには大袈裟な問題も多分に含まれている。だが文句無しの良書だと思う。

池上彰は元来小難しい政治、宗教、経済等々の問題を、平易な表現と、知識の無い人でも分かってしまう様な例え話を巧みに操り、物凄く分かり易く説明する能力に長けている人である。ホントに感心します。

ニュースや時事問題が何となく分かった気になっている大人が読むのに丁度良い本である。そう、正にオレにはうってつけだった。非常に数多くのテーマを扱っているので、一つ一つの問題に対する説明は浅くなってしまうのは止むを得ないところだろう。多少、専門的な知識を有してる人にとっては、物足りない、レベルの低い話と感じるでしょう。

全て時事ネタなので、遅くとも6月くらいまでに読まないと、完璧に賞味期限切れとなりますね。

彼の様にゼロから丁寧に教えてくれる先生がいたら、ガキも勉強が好きになるんじゃないだろうか。

完成品

ちょっとした物語集が完成しました。

本日、Jリーグ観戦の合間を縫って、オレのマンションから徒歩5分、印刷を依頼した某会社に取りに行った。

原稿そのものは、あんなに何度も読んだ(読まざるを得ない状態だった)のに、改めて通読してしまった。製本されたモノは良いわ。紛れも無くホンモノ。

全部で30冊。
Monogatari

著者の手に渡った以後、本編に収録するのを諦めた、後書的な文章をここに書こうかなと思っています。

 

大人になって分かる味

後藤武士/読むだけですっきりわかる日本史★★★★☆

この本、相当売れているらしいですぜ。「歴女」なる非常に奇異な言葉が流行語大賞候補にノミネートされる事からも分かる様に、巷では歴史が何となくブームになっているらしい。その証拠に、現在「もう一度読む山川日本史(世界史)」がベストセラーになっている。

「山川日本史」ほど詳細ではないが、平易な言葉で、サラッと、しかもちょっと面白く日本史をまとめた。そんな本。

理系のオレは高校時分、センター試験のためだけに半ば無理矢理、日本史を選択していた。正直、地理、世界史のいずれを選んでいても熱心に勉強する事は無かったと思う。数学、物理、化学の方が圧倒的に得意だったし、好きだった。

まあ、それでも日本史の最低限の流れ、用語、人物は理解していたので、新事実発見!みたいな驚きこそなかったが、忘却の彼方に追いやられた事が甦って来る、何とも言えない面白さを味わう事ができた。

あったな、こんな展開。その後すぐ暗殺されちまうんだよな。
いたいた、こんな名前の奴。コイツが、またとんでも無い事をやらかすんだよ。

文章を読むにつけ、こんな感情が沸き起こってくる訳です。そして、最終的に、歴史って実は結構面白いじゃんという所に行き着いた。でも、タルタルソースやビールの美味さに気付かないと同様に、子供の時、これに気付くのは非常に難しいんじゃないかと思う。少なくとも、オレは気付かないガキだった。その当時は、とにかく算数が大好きでした。またかよ。

もしや、子供は自分自身に歴史がほとんど存在しないため、歴史の持つ意味や深さを感じられないのかも。この文章を書いていて、正に今こんな事を思った。

でも多分、違うわ。オレの咄嗟の思いつきは大抵の場合間違っている。

幕末~現代が最も魅きつけられた。

動乱の幕末時代を生きた人々の高い志と実行力には感服させられるし、国際連盟を脱退、国際的に孤立し、国家総動員法を制定し破滅の道へ歩む日本の姿は、戦争の恐ろしさ、愚かさを嫌でも実感させられる。

そして、その後の軌跡的な復興、急激な経済成長。これらは偏に日本人の知力と弛まぬ努力の賜物であり、日本人の素晴らしさを再認識した。戦後の日本の復活劇は世界史上、類を見ないものらしい。日本人は本当に凄い。日本人よ、もっと自信を持て。オレは誰なんだよ。



BGM
SPITZ/チェリー
新たな旅立ちを歌った歌。卒業ソングとしても十分に通用する。草野マサムネは童貞という意味も含んでいると言っていた。良い曲だ。

SPITZ/空も飛べるはず
ドラマ「白線流し」主題歌。ドラマの世界観にマッチしまくりだった。当時、オレは高校2年で毎週欠かさず見てた。有名大学入試に挑む主人公達と翌年の自分の姿を重ねながら。

SPITZ/愛のことば
良いですよ、コレも。メジャーにならないのが不思議。それにしても「ハチミツ」は名盤だ。

SPITZ/仲良し
青くて、清々しくて、爽やかで。汚れた大人は苛立ちを募らせるかも知れない。オレやみんなにもこんな時代があったんだぜ。

SPITZ/ロビンソン
バンドの出世曲。全てはこの曲から始まった。何だろう、この切なさと懐かしさは。名曲過ぎる。懐かしさは95年当時を思い出すから感じるのではなく、最初に聴いた時から感じている。草野マサムネは稀代のメロディーメーカーだと思う。

願望と皮肉

ちょっとした物語集の話。

昨日、印刷屋との詰めの折衝を終え、総費用の一部を前金で差し入れた。あとは製本されるのを待つだけである。

冊数は30冊にした。正直多いと思う。だが、30冊を超過すると、1冊当たりの製本代が一気に下落する事に加え、完成品自体の質も上がるらしいのだ。冊数が増えると、それだけ印刷代と製本代は高くつくのだが、本1冊の単価を考慮し、思い切って決めました。


「みんなで小説書いたんだ」
「ええ。でも僕は書いてないんですけどね」
「あ、ホントだ。Tさんの名前が無い」

つま楊枝の様なモノで突かれた様に小さい痛みが胸に広がり、後悔の念が湧き上がった。

主催または同級生からライナーノーツ、後書き、解説的な文章でも書いてみればと提案され、一瞬その気になったが、止めておいた。

残ページ数の関係もあったが、そもそもオレにそんなものを書く資格ねえやと思い直したからである。

表紙は勝手に作成した。タイトル及びそれに続くサブタイトルはオレの本心とは程遠い内容。敢えて言うならば、読者が読後にそう思ってくれれば良いなという願望と、ちょっとした皮肉。

出来あがりは2週間後。執筆して下さった方には1冊は無料で差し上げます。

こんな事で贖罪が済んだとは思っていない。機会があればリベンジをしたい、今のところはそう思っている。

さて、4月以降、オレは販売活動に精を出さねばならん。

緊張

このカテゴリーで文章を書くのは昨年の9月14日以来らしい。だが、緊張を感じているのはそれが理由じゃない。

この小説に対する書評を書くという行為、それ自体が緊張の源となっている。というのも、オレは小説の著者と浅からぬ関係があるからだ。

実は以前、その方がグループ会社―管理部門から見れば同じ会社とみなして全く問題ない。営業同士は多分そう思ってないが―で働いていたのである。会社での関係は、大宮アルディージャのサポーターが抱く、自分達が愛して止まないクラブのリーグ優勝に対する期待度くらい薄かったですけど。完全に業務の関係で、メールのやりとりをしたりする程度の間柄。彼女は支社に所属していたので、従業員が一堂に会する催しの時くらいしか、直接顔を合わせる機会が無かった。いや、そんな催しがあっても、会釈するのが関の山という感じだった。

ともかく、無関係じゃなかった人が書いた本に対して、書評を書くというのは、なかなかどうして難しいですね。だが、相手は文藝賞を受賞し、芥川賞の候補作になる作品を書いた立派なプロ。他の作家と全く同じフラットな視点で評価を下してみた。


藤代泉/ボーダー&レス★★★☆☆

新入社員の江口理倫は、淡白で熱くならずに、悪く言えば適当に生きてきた。江口は同期入社の在日韓国人、趙成佑(チョ・ソンウ)と喫煙室という社内における憩いの場を共有できる事がきっかけで話をする様になり、次第に彼との仲を深めていく。

2人を隔てる絶対的な溝の存在とそれから生じる苦悩を、爽やかにサラリと描く友情物語。簡単に言えばそんな話。

まず率直に思ったのが、小説のギリギリ、それこそボーダーを突いた作品だなと。文体、文章が非常にポップ。とにかく、ふわふわしている。硬い、軟らかい、または重い、軽いで言えば確実に後者。つまりは、この「駄文」の文章とは正反対と言える。

単に、軟らかく軽いだけじゃない。五七五調のメールのやり取りを筆頭に十分な巧さと、お洒落なユーモアを備えている。所々、著者の顔を思い浮かべつつ、「うめえな」と呟いてしまった。

これは個人的感想だが、在日問題はこの作品のメインテーマとはなっていないような気がする。飽くまでも、物語を彩る要素(まあ結構、重要で大きいのだが)となっている感じでしょうか。それが証拠にソンウが己のアイデンティティーについて感じている、大いなる葛藤は後半までほとんど顕在化しない。

江口とソンウは親友と呼べる関係になっても、意図的かつ暗黙裡に、在日韓国人と日本人という境界線を避けながらの付き合いを続けていく。しかし、強烈過ぎる個性を持った在日の女性、新井美姫の登場によって、2人の境界を意識する事を余儀なくされる状況となる。この女性は正に、線路の分岐器(ポイント)の様な存在だ。物語の展開を変えるためだけの登場人物と言っても過言ではない。それにしてもオレの大嫌いなタイプの女ですね。

その後、江口は在日問題について、彼なりに真摯な態度で向き合う。江口が出した答えはシンプルで分かり易いものだった。差別・偏見を、ソンウの様に鼻で笑う様に、土俵の外へうっちゃっている。帯に書かれていた『中高生の課題図書にだってなる』は余りにも大袈裟だが、これまでとは一味違う在日問題への回答を示唆しているのかなと感じた。

本当の在日の読者からは、リアリティーが無さ過ぎるという批判を受けている様だが、それもよく分かる気がする。劇中、ソンウが日本人から受けた差別的な行為は氷山の一角に過ぎないだろうし、現実はもっと壮絶なんだと思う。

人種の問題は感情的な面を含め、恐ろしく複雑で難解だ。その意味でも、その表面を描いたに過ぎないこの小説を在日の作品と位置付ける事に強い抵抗感を感じる。どちらかと言えば、青春小説に属するだろう。

前述の新井を含めて、非常にキャラの立っている登場人物が多い。とりわけ、フットサルサークルのメンバーにして、後に江口とややこしい関係となる寺内(女性)は秀逸だった。冷酷で、醒めた感覚を持つところは現代の若者然としている。主婦への悪態が実に良い。次点はいつも自信に満ち溢れている先輩社員の飯尾。実にマンガ的な人という感じがしたが、物語を盛り上げるのに必要不可欠な存在だった。

非常に読み易く、色々と考えさせる作品だったが、在日問題を扱うなら、何かもう少しグッと来る部分が欲しかったなという印象は拭い去れない。★は3つまで。

今後も是非とも頑張って欲しいですね。

井上校正

ほぼ終了。

疲れた。段落変更後、一マス空けてないなんて状態は序二段です。文章の途中で唐突に改行されてたり、章のタイトルのフォントが章によって異なっていたり、その他色々あった。

実は文章の体裁を整える以上に、一行の文字数、余白、段組みなどを決定するのに時間を要してしまったのだが。

残すは表紙と、ページのフォント等の細かい部分だけ。

完成した時は、無参加ながら妙に感動できそうだ。嗚呼、目痛え。

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