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マダム

日本橋のカフェの喫煙席。

三越の紙袋を両手一杯に持ったマダム2人組が入ってきた。ショートカット銀髪の方がコートのポケットからメンソールのタバコのソフトパックを出してテーブルに投げた。荷物を下ろして席に着くやいなやタバコを1本取り出して火を点ける。

横を向いてから、フーっと勢いよく紫煙を吐き出す。満面の笑み。相方―茶髪に染めた長い髪のマダム―は静かにコーヒーを啜っていた。

茶髪が話し始めた。
「ニートって言葉あるでしょ?なんで最近の若者は働こうとしないんだろうねえ」

銀髪が返す。
「ホントよね。学校出たら働くのが当たり前だと思っていたわよ。周りにそんな人いなかったしね。そんな人がいるのが不思議でしょうがない」

「仕事を選り好みしてるから働け無いのよ。要はわがままなだけ」
「親が甘いと思わない?無理矢理にでも働かせりゃいいのよ」
その後も言葉を重ねて、ニートをこき下ろしている。

マダム2人は見るからに金持ちそうだった。身に付けている衣装は一瞬で高価と分かるモノだった。つまりは、センスの無い富裕層が好んで着る派手な上にダサい服であった。

こと金銭に関しては不満を感じた事がないだろう。貧乏人には、三越で両手が塞がるほどの買い物は出来ない。いや、そもそも日本橋三越になんか来る事すら無い。

彼女達には、労働する意欲があり、本気で就職活動を行なっても、職を得ることが出来ない若者が五万といる事を理解できないのかも知れない。

銀髪が2本目のタバコを吸い始めた。ニートの話題はまだ続いている。

お前等みたいに人生が上手くいってるヤツばかりじゃねーんだよ。本人達は好きで無職を続けている訳じゃないし、決してそれが良いとも思ってないんだよ。この辛さは実際に体験した人間にしか理解出来ない。

元ニート。かつての自分の事を蔑まれている様な感覚に陥った。オレはただ運が良かった。新卒という特急券を失い、強力な武器を持っていなかったが、何とか暗く淀む沼から這い出す事ができた。

自分を引き上げてくれたのがであるかはよく分かっている。本当に下らない話だ。1つ言えるのは、15~19歳の時、そこら辺の人よりは懸命に勉強しておいて正解だったという事。

人を見抜く力を持ち合わせている人などそう多くない。みんな飾りに騙される。採用のプロだと?笑わせるなよ。本当にプロならば早期退職しない人を選べるだろうが。

色々な事が頭を巡る。気分が悪い。

マダムのテーブルの灰皿に吸いカスが溜まっているのが見えた。

下品で派手な熟女2人は、知ら間にスカイツリーの話で盛り上がっていた。

腕時計を見て、予定の時間を少し過ぎている事を知る。オレはマダム2人に一瞥をくれて店を辞した。

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コメント

初めまして。 偶然「重力ピエロ」についての過去記事を拝見しました。 最近伊坂さんの本(死神の精度)を読む機会が有り「重力・・」はどうなのかなと思ってたので参考になりました。 有難うございます。 最新の「マダム」も読ませて頂きましたが、小説を読んでるかと錯覚するほどでした。

敢えて小説風に書いてみました。話そのものはノンフィクです。

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