突然の打合せ
月曜、部門別PLについての打合せが行われた。
先週の金曜日の夕方、ボスから一言
「t、月曜午後PLの打合せするから」
とだけ言われていた。
事前に具体的な事は一切説明されていなかったので、何も準備せず、時間通りに小会議室へ向かった。
ボスは情報の一部分、時には末端の末端しか開示しない傾向が強い人なのである。他部署からの重要な情報の多くは、最初に彼の元に届けられるのだが、それが自分の所へ流れず、しばしばそこで遮断されてしまう。
仕事をしていて、「その話、聞いてないの?」と言われる事は数限りなくある。オレは、この状況にすっかり適応している。そこで必要以上に苛立っても体力を消耗するだけだ。
さて、打合せに参加すると、どうやら目的は次の四半期より部門別PLを改良するために、経理課全員で議論しようというものであった。
おお、珍しいと思った。
まず何かをする事に全員で議論して決定するというプロセスを踏もうとしている事。
もう一つは、ヘッドが経理の最高責任者の顔をしてこの打合せに参加している事だ。
ヘッドは、その部署のメンバーが認めていようといまいと、通常90%以上人事総務の最高責任者である。それが証拠に、経理部部会には4ヶ月に1回くらいのペースでしか参加しない。
場を仕切るのはボス。ペラ1枚のレジュメが配布された。箇条書きで色々と書いてある。ボスは珍しくヘッドに鋭く切り込んだ。
「現在、部門別PLは一体何のために使用されているんですか?」
この質問は最もであろう。以前は経営会議の資料として提出しており、その期日を厳守しなければならかったのだが、現在は経営会議では使用されておらず、完璧な意味での締切は存在しない。ただ単に役員及び執行役員に配布されているだけである。
ヘッドは、いつもの様に、言葉に詰まりながら、各部門の販管費、営業利益、損益を確認する事によって、今後の営業戦略や組織などを決定するための資料であるという様な事を言った。ヘッドは、何かを話す時、『あのー、そのー』という言葉を矢鱈に言う。
傍から見てて、嗚呼、窮屈そうだなあと感じてしまった。最高責任者たる威厳ゼロだ。
この説明で納得できる訳がない。営業戦略、組織を決定づけるための資料だったら是非とも経営会議で使用しろよと思うのはオレだけじゃない筈。
ボスは、とにかく強気だった。結局のところ、部門別PLは執行役員の成績を決定する資料になってるんじゃないかという趣旨の事を言った。
攻めるねえ。守備にも気を使わないと、カウンターから失点しちまうぜ。
だが、ボスの発言には確かな裏付けがある。間接部門の経費の配賦に関して、執行役員から直々に電話等で不平・不満を言われているからだ。
執行役員は自分が受け持っている事業部門の損益だけを、オレがテレビ放映のない浦和レッズの試合の勝敗を気にするのと同じくらい、または、オレが保有している銘柄の株価の動きを気にするのと同じくらい気にしている。
この流れで、オレも発言。
「経営陣である役員、執行役員クラスの人間が、各事業部門単位の損益ばかりを気にしているのは、いかにも視野が狭いと思います。市況が著しく悪く、凹んでいる事業部門があったとしても、3社トータルで黒にするためには、どうするべきかを考えるのが、それが経営というものだと思います」
営業利益の数字が、彼等の査定の対象となっている事は想像に難くない。結構、必死ですもの。そして、この事実は、部門別PLがヘッドが言った用途で使用されていないという事を証明しているのであった。
査定を決定する要因となっている事は否定しない。だが、部門別PLをそのための資料としている訳じゃないとヘッド。さらに、事業部門の長たる執行役員(役員)が自分の受け持っている事業部門の数字を気にするのは当然だという意味の発言をした。
いかにも苦しい。
結局、ヘッドの口から、『部門別PLの用途は?』というボスの問いに対する明確な答えが出る事がなかった。ただ、非常に重要な資料なので、問題点があるなら、それを取り除き、改良するべきだと言う。
用途がイマイチはっきりしない資料を、改良するにはどうするべきかを議論するって何だか意味不明である。
スカッとしないまま、その後は各論へ。
ここでの主要テーマは、2~4名の「部」の営業利益、損益を明らかにする意味があるか否かであった。
オレは
「部門別PLを、『営業戦略、組織を決定づけるための資料』として位置付けているのなら、少人数の部の損益を出す意味は全く無いと思う」と発言をした。
すると、ヘッドはこう言った。
「ああ。全く意味がないと思う。これ、なんで営業利益出してんの?」
出た。得意のすっとぼけ。
組織変更あるたびに、間接部門の経費の配賦方法等をボスが相談してるだろうが。その時に、この部とこの部は少人数だから営業利益は必要ないから、数字を算出しなくて良いとか指示しろよ。
「7月からのPLでは、少人数の部はまとめて良いんですね」と確認すると、ヘッドはこう言った。
「KINGの承認が取れたらな」
マジかよ。考えられない。
こんな細かい事までKINGの承認が必要なのか?あなたは仮にも、その部署のメンバーが認めていようといまいと経理の最高責任者ですよ。自分で決定して、事後報告すれば良いじゃないですか。それくらいの権限はあるでしょう。
驚きを通り越して、呆れた。でも、いつもこんな感じだわ。独力で何も決められない。
決定権を持ちながら、自らそれを行使しない。そのため、本来、最高責任者として責任を取るべき場面で責任を取らない。おそらく、本人に、自分が責任を取るなければならないという自覚が無いのだろう。
うちの会社の場合、ヘッドだけに言える事じゃないかも知れないけどね。
業績悪化の責任は誰が取らなければならないか?メンバーはみんな知っている。
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