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伊坂幸太郎/重力ピエロ★★★☆☆
単純にミステリーに分類してしまうのは違うような気がする。もちろん物語の主軸は謎解きであるのだが、切なく、哀しい、でも凄く暖かい、ベタとも言える家族小説という色合いを呈している。

遺伝子情報を扱う会社に勤める泉水には、2つ下の弟がいる。名前は春。春の出生には秘密があった。母が未成年の強姦魔に襲われた時に身籠ってしまったのが春だったのである。

忌まわしい事件を胸の奥底に抱えながらも、そこから派生する様々な諸問題を乗り越え、兄弟が一人前の大人に成長した頃、事件が起こる。連続放火である。

春は、予め放火の場所を暗示するグラフィティアートの存在に気付く。グラフィティアートと放火にはいかなる関係性があるのか。泉水と、彼の弟、そして父は、その謎解きに挑み始める。

彼等が直面する事になる真実は、彼等家族にとって重大な意味を持つものであった。そんな話。

これは著者の狙いなのだろうが、ともかく、主人公が平凡過ぎる。それに比べて脇役達はは1人1人、異常なまでに魅力的であった。とりわけ父親が素晴らしい。彼の台詞には、いちいち胸を熱くさせられた。

兄弟の会話は、機知に富み過ぎている。劇中に、ネアンデルタール人とクロマニョン人、ガンジー、その他様々な知識が飛び交う。最初はタイトル通りの感情を抱いたのが、最終的にはちょっとウンザリしてしまい、やっぱり「やり過ぎだよ、これは」と思い直した。

著者は東北大学出身。基本的に頭が良い人なのでしょう。洒脱でスタイリッシュな文章は「アヒルと鴨―」と同様だった。ドライなのに、妙に人情味が溢れている。この辺りに著者の非凡さがうかがえますね。

先が読めてしまう展開と、事件後の話に一山なかった事がマイナスで★3つに留めておいた。

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