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無茶だよ、それは

新進気鋭という言葉がピッタリ来る作家ではないでしょうか。オレにとって、この作品がファーストコンタクトになる。

緻密なプロットと、洗練されたユーモア。それらを巧みに描き切れる才能豊かな作家という印象を受けた。

伊坂幸太郎/アヒルと鴨のコインロッカー★★★★☆
「現在」と「2年前」の話が基本的に交互に繰り返される構成で物語は進む。この手法をカットバック方式と呼ぶらしい。

「現在」の主人公は、仙台に一人暮らしを始める事になった大学生の椎名。隣人の悪魔じみた風貌の男、河崎から、出会ったその日に、広辞苑を盗むために書店を襲う事を持ちかけられる。

一方、「2年前」の語り手はペットショップで働く琴美。近所で頻発している動物虐待事件を中心に話が展開される。

これら2つの物語が紡ぎ出す真実は如何にというミステリー。過去と現在は、なかなか交わる事がないのだが、読み進めていくに連れて、うっすらとその関係性が明らかになっていく。

椎名は2年前に起こった事件について、興味を持ち事実を知ろうと行動を起こす。それはあたかも読者の気持ちを代弁するようなものであり、読者は彼にシンクロする形で断片的に描かれている過去の出来事の裏側について考えを巡らせる訳だ。実に上手い。

大オチは、何となくそうじゃないかと予想はしていたが、やっぱり無茶だなあと感じた。そんな錯誤が起こるとは思えない。椎名だったら有り得るか。

劇中描かれていたブータン人の思想は日本人のそれとは大きく異なっていて、非常に興味深いものがあった。同じ人間でも、取り巻く環境によって考え方は大きく変わってしまう。大学時代、教育原理で学んだ「環境と初等教育」の内容を思い出した。

最後の余韻を残す感じも良い。個人的には、全てを知り、今度は自分の問題に立ち向かわなければならない椎名のその後が気になるところだ。そう思ってしまうのも、悔しいが著者の思惑通りなんだろうなあ。

面白かった。他の作品も読もうと思う。

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コメント

映画化された、変な医師の話、in the poolだっけ? は、単行本のデザインがnirvanaのnever mindの流用だった。

音楽にも造詣が深そうな作家だと思った。

「イン・ザ・プール」は奥田秀朗です。

表紙は本当にnever mindにソックリですよね。それだけで食い付く人もいるそうで。小説のジャケ買いとでも言えば良いのかなと。

思い出すのは、太宰治の「人間失格」の表紙を「DEATH NOTE」の小畑健のイラストにしたら、バカ売れしたという話ですね。

小説も意外とジャケットが重要らしい。

あ、違う人なんだ。奥田秀郎と一緒になってた。なんでだろうw

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