読み易いよ。間違いなく
水原秀策/サウスポー・キラー★★★★☆
第3回『このミステリーがすごい」大賞受賞作品。ミステリーというよりは、可笑しな表現だが、穏やかで爽やかなハードボイルドと言える。
左投げのピッチャーである主人公沢村が、自宅前で何者かに襲われ、暴行されるところから事件が始まる。翌日、球団フロント、マスコミ各社に事実無根の怪文書が送られ、それが原因で彼は球団から謹慎処分を受けてしまう。彼は、自分を陥れた犯人を探し出すべく、自ら真相究明に乗り出すという話。
野球小説としても十分楽しめる内容になっている。野球好きは間違いなく、それだけで評価が上がってしまうだろう。沢村と、監督、フロント、コーチ、トレーナーとの会話やそれらの人達との距離感、チーム内部の微妙な人間関係は、リアリティを感じさせるもので、非常に面白かった。
そして、登場人物の設定が巧く、魅力的な人物が多い。これによってミステリーにしては、ベタ過ぎる展開が引き締まっている。沢村の理知的で、飄々とした態度と、ヒロインである売れてない女優黒坂美鈴の真っ直ぐな性格、共に良い。
物語の後半、野球のシーンが描かれるが、これも秀逸。心地良い緊迫感と躍動感があり、自然と沢村を応援している自分がいた。野球の素晴らしさがじんわりと伝わってくる。野球って本当に素晴らしい。そして、最後まで読み易い。
こんな感じで総合的に優れてはいるんだけど、何か物足りないのも確か。とは言え、これがデビュー作、多くを求めるのは酷というもの。今後に大いに期待できる作家の登場を素直に喜びつつ筆を置きますか。
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