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オレの想像を超えていた2

数分後、有楽町線に乗り込んだオレは、電子レンジを持って運ぶという状況から解放されたことに、ただただホッとした

幸いにも乗客はそんなに多くなかった。立っている人間が何人かいる程度である。満員の中、デカイ段ボール箱を持って電車に乗るのは、ある程度の勇気を要する。空いてて何よりであった。東京メトロは深い時間でも、割と空いている印象がある。夜の宇都宮線のような混雑具合に遭遇した事は、今のところない。

電車はスムーズに進んでいる。しばらくすると、江戸川橋駅からマンションまでの道のりを頭に思い描き、不安になった。江戸川橋駅改札から自宅マンション方面の出口まではかなり遠い。しかも、当然だが階段もあるからだ。

市ヶ谷-飯田橋間。じわりと後悔の念がオレに押し寄せてきた。電車の床に鎮座している電子レンジにちらりと視線を移す。場違いな感じは否めない。オレは、彼を、彼の仕事ができる場所に配送するという任務を、自ら買って出た事を強く意識させられた。

江戸川橋駅に到着。しばらく振りに取っ手を掴み、箱を持ち上げる。ズシリと来る。まさかコイツ、重くなっているか?もちろん錯覚である。

ホームから改札に繋がる階段は難所であった。階段では、ある程度高く持ち上げる必要があり、平坦な道を歩く時よりも、余分に体力を削られてしまう。やっとの思いで改札前に辿り着く。

改札前、小休止を挟む。オレは、ネクタイを外し、上着を脱ぎ去った。それらと、サイフ、携帯を合わせてバッグに詰め込んだ。もう暑くて堪らない。額のみならず、全身から汗が吹き出ている感じがする。

改札を抜けると、直線が伸びている。普段は何とも思わない直線だが、レンジを運ぶとなると、異常なまでに長く感じる。そして、直線の先には、階段が待っているのである。

直線をゆっくりと歩きながら、「持ち運び」をボート池を1周する程度の事だと思った自分の愚かさに思わず、舌打ちした。でも、やるしかねえ。それが男ってもんだ。

直線中間に近づく頃、突如、自分の右手に異変を感じた。何だか思うように力が入らない。とりわけ、取っ手を掴む力が弱まっている。

どうやらオレ自身が、筋肉の疲労を自覚していなかっただけで、実はここに至る過程で、右手には相当の負荷がかかっていた様なのである。

考えてみれば、「握力」は、普通に生活している限りでは、さほど重要性を感じない力である。つまり、それは日常生活を送る上でほとんど使用する事がないという事。たまに使おうものなら、簡単に馬鹿になるって寸法だ。

休めば、右手が回復するという淡い期待を抱きつつ、オレは非力な左手を使う事にした。性能面で、全く右手には及ばないが、疲労度ゼロの左手は思いの他機能した

途中何度か休憩を挟みながら、駅の階段を攻略する。電車がホームに降り立ってから、既に15分が経過していた。地上に上がり、多少元気が沸いたが、それでもマンションは遠い。

ここで、久しぶりに右手を使用してみることにした。箱を持ち上げてみると、すっかり回復したように感じられた。おお、良いじゃん。

そう思うのも束の間、30秒と持たずして取っ手から手が外れそうになる。ダメだ。やっぱり馬鹿になったままだ。それに加えて、上腕二等筋が何かプルプルし始めた。どうやらこれより先の道中は左手をメインに航海を続けざるを得ないようだ。正に、ASKAを失ったCHAGE&ASKA状態。辛い・・・

ここからが本当に地獄だった。左手が、右手と同様の状態になるまでに、そんなに時間を必要としなかった。両手が馬鹿になってからは、10メートル進んでは、休憩するという感じになってしまった。そんな自分の姿を第三者的に考え、余りの滑稽さに思わず笑ってしまった。

「何やってんだ、オレは」という思いと、「あと少しで楽になれるじゃないか、頑張れオレ」という思いが交錯する。

江戸川橋駅に到着してからおよそ1時間、そして、ついに目指していた唐の国の姿が見えた。大袈裟に言えば、犬上御田鍬の気持ちだ。

自宅マンションの入り口が目に入った時、オレはプルった左手で思わずガッツポーズをしそうになった。間違いなく、「良し!」と声に出していたに違いない。本当に、強烈に嬉しかった

しかし、既に『今日この電子レンジで使用する』という当初の目的などは、一切吹き飛んでいた。そんな余裕はなかった。

帰宅したオレは、電子レンジの箱を部屋の真ん中に置き、空腹を満たすためにビーチサンダルを突っ掛けて、早稲田通りにある「すき屋」に向かったのであった。この時、プルった右手で食べた豚丼(大盛り)は、もの凄く美味かった。


重い商品を買った時は配送を依頼するに限る。何とか持ち運べるかも知れないと思うと、痛い目を見ますよ。多分。

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コメント


おつでしたぁ~
大変だったね~

でも腕の力鍛えとかないと結婚式にお嫁さんをお姫様抱っこできないぞ!!恒例だからね。
それかスリムな娘と結婚するか。

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